皆様、こんにちは
メンタルヘルスケア&マネジメントサロン代表・公認心理師の小高千枝です。
【ビジネス|教育の信頼を揺るがす問題】”形だけの取得”が意味すること
小田原短期大学の通信教育課程において、幼稚園教諭2種免許の取得に関わる単位認定試験が、実質的に“模範解答の書き写し”で通っていたというニュースが報じられました。
模範解答が記載された「学習の手引き」がそのまま試験で使えたというこの制度で免許を取得していたとのことです。
このニュースにつきまして、元幼稚園教諭の立場として感じたこと、そして、国家資格を持つ立場の人間として記事を書かせていただきました。
日本経済新聞
『小田原短大、模範解答書き写し可能な不適切試験 幼稚園教諭免許巡り』
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD305W10Q5A630C2000000/
『小田原短大、試験での模範解答携行を容認』
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO89717200Q5A630C2CM0000/
子どもたちにとって、幼稚園は「社会との出会いのはじまり」です。その大切な時期を支える幼稚園教諭には、子どもに向き合う力だけでなく、専門的な知識と実践力が求められます。しかし、その信頼の根幹を揺るがす事実が今回明らかになったと感じます。
神奈川県の小田原短期大学の通信教育課程において、幼稚園教諭免許(2種)取得に必要な「最終試験」で、履修教材である「学習の手引」に掲載された模範解答の持ち込みが許可されており、実質的に書き写すだけで単位が取得できる状態だったことが、大学への取材により判明しました。
問題があったのは2020年度以降の制度運用で、模範解答と同じ設問がそのまま出題される形式がとられ、2023年度にはこの試験で1759人が幼稚園教諭免許を取得。文部科学省は、模範解答の「丸写し」が確認されたことから不適切と判断し、6月までに大学に対して口頭で指導を行いました。
さらに、この不適切な制度は、札幌市などの姉妹校にも広がっていたとされ、実際の合格者数はさらに多い可能性が指摘されています。
加えて、札幌市の系列専門学校で勤務していた男性教員が、この内部資料を報道機関に提供したことを理由に懲戒解雇され、不当解雇として地位保全を求める仮処分を札幌地裁に申し立てたという背景も報じられています。
(オフィスの植物たちが夏の暑さにも負けずにすくすく育っています)
私自身、かつて幼稚園教諭免許・保育士資格を取得した経験があり、幼稚園教諭として現場で働いていました。免許取得時は知識だけでなく、実習を通して子どもたちと実際に向き合い、試行錯誤しながら時間をかけて体得していった過程が、今でも自分の土台となっています。
また、現在は「公認心理師」として、同じく国家資格を持つ者として日々現場に立っていますが、資格は持っているだけで成り立つものではなく、机上の空論ではなく「人と関わる現場」でどう応用し、常に現場と向き合い、知識と実践を往復しながら学び続けるものだと痛感しています。
どの資格にしましても、ベースとなるものを大切にしながら、どう成長していくかが問われるものです。
国家資格を持っているという“肩書”だけでは、人の心に本当の意味で寄り添うことはできません。現場で生じる悩みや葛藤、予測できない人間の反応と丁寧に向き合うこと。それこそがこの仕事の本質であり、資格を持つ者に求められる「人としての成熟」や「継続的な学び」でもあると、私は日々感じています。
これは幼稚園教諭や心理職に限らず、すべての資格に共通して言えることではないでしょうか。
特に、人と関わる専門職であるならば、資格取得のプロセスが安易であってはならないのです。
繰り返すことになりますが……
幼児教育は、子どもたちにとって「社会との出会い」の第一歩です。
その場所に立つ大人が、適切な知識や感性、そして倫理観を持たずに現場に立ってしまうと、その影響は一人の子どもの人生に長く残るかもしれません。
「試験さえ通ればいい」「資格さえ取れればいい」
そうした“表面だけをなぞる姿勢”が、社会の中でどれほど深刻な問題を引き起こすか。今回の件は、私たちに大きな問いを投げかけているように思います。
「形だけ」の試験制度によって、知識も実践力も不十分なまま教育現場に立つ人が増えてしまえば、その影響を最も大きく受けるのは子どもたちです。
私たちは今一度、「資格とは何のためにあるのか」「どのように育てるべき人材なのか」「その後どう向き合っているか」という本質に立ち返る必要があります。
効率化や利便性が進む今の時代だからこそ、「人が人を育てる」ことの重みを省略してはいけないと感じます。もう一度社会全体で考えるタイミングが来ているのかもしれません。
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