COLUMNコラム

【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:相手をどこまで許せば良いのか?~part 1 ~ – 「制限」を理解すること-

所属カウンセラーの水野です。

今日は、3月3日。桃の節句、お雛祭りですね!

厳しい寒さも少し落ち着き、ポカポカ陽気の日が増えましたね。木々には蕾もつき始め、春の兆しを垣間見ることができるようになって来ました。
4月に蕾が開き、花を咲かせるのが楽しみですね!

3月は、卒業、異動、退職…
4月の新年度を迎える前の準備期間でもあるため、ゆっくり過ごせるのが理想ですが・・・
現実はそうとはいきません。年度末のバタバタや引き続き、入学準備等で大忙しです。

1年間の集大成と始まりとが隣合わせのこの季節、体調を崩される方が多くいらっしゃいます。暖かくなって来たことの安心感、花粉症に加え、別れの季節であることから、メランコリーにもなりやすい季節です。意識していなくても、「実は疲れているかもしれない」と頭の片隅においておいていただき、くれぐれもご無理のないように過ごされてください。

さて、私のコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の相談対応の中で感じていることや、自身の体験を振り返りながら、一緒に考えさせていただけたらと思っています。
大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。
「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことだからです。

時に、「カウンセリング」は非日常の空間と表されることもありますが、
私は基本的に、「カウンセリングにおいて大切なことは、日常生活においても活かせる!!」と思っておりますので、日頃、私がカウンセリングの中で使っている考え方やスキルを日常生活と関連づけながらご説明し、コラムを通して、皆さまに存分にお伝えしていきたいと思っております。

そして、皆さまが日常生活の中で、「安心感の持てる関係性」を相手と築いていくきっかけにしていただけましたらと思っております。

▷これまでのコラムはこちらです⬇︎
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム

前回のコラムでは、ジェットコースターを例に挙げ、<心の安全バー>について書かせていただきました。

▷前回のコラムはこちらです⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:愛はジェットコースター!?-「楽しさか?」「安心か?」論争に触れて-

<心の安全バー>とは、自分が安心できる、自分守る線引きや対象を設けることを指しています。
そして、現在社会において問題として挙げられている、暴力、DV、モラハラなどの様々なハラスメントなどは、完全に<心の安全バー>が外れてしまっている、外されてしまっている、自分自身を危険に晒している状態であることをお伝えしました。

<心の安全バー>を締めるとは、カウンセリングやセラピーにおいての「制限」という考え方に近いものです。
本日は、「制限」について、カウンセリングの中ではどのように扱われているかを例に挙げてご説明したいと思います。
ひなあられでもお召し上がりいただきながら、リラックスしてお読みいただけたら幸いです。

制限を理解することは関係性にどのように役立つのか?

カウンセリングの中で、「子ども、夫、恋人、友人などをどこまで許したらいいのか?」
と、尋ねられることがよくあります。

相手を「許せない」「受け入れることができない」「許容できない」場合において、
何を相手に求め、どこまでを自分が我慢すれば良いか、或いは、我慢すべきなのか、
その線引きについて悩んでいらっしゃる方が多くいらっしゃいます。

また、その悩みの背景には、「自分のキャパシティーが狭いことによって相手を受け入れることができないのではないか?」との、自分を責める気持ち罪悪感がしばしば垣間見られます。

何を「許せない」「受け入れることができない」「許容できない」と感じるかは、人それぞれ違うため、「自分でなかったら、受け入れることができるかもしれないのに・・・」と思われていらっしゃることが話されます。

確かに、自分が我慢すれば、自分が責任を引き取れば、関係性はある程度、維持されるかもしれません。そして、100%自分が我慢しない関係性もないのかもしれません…

しかし、相手は、「自分の大切な人」です。やはり目指すのは「我慢しない関係性」なのではないかと思うのです。

なぜなら、「我慢」はいずれ、必ず爆発するからです。
我慢して我慢して我慢して…それを積み上げた上での爆発は、自分、相手を傷つけ、関係性の修復をも難しくする破壊力のあるものです。そして、相手を傷つけたことに自分はまた罪悪感を感じる悪循環を辿ります。

その前に、できることはあるはずなのです。

関係性と関係性の間や、自分の心の中に引く、その見えない線引きをどこで引くか…

それは、誰にとってもとても難しい課題です。そして、何を許容できるかなどのキャパシティーは、個人間の違いだけでなく、個人の中でも一定ではなく、自分自身のコンディションによっても、左右されてしまうからです。

従って、自分のコンディションによって左右されない線引きをする必要があるのです。

そこで、お話を聞く中で、私は、「どこまで許したらいいのか?」とのお悩みの背景にある気持ちが、
落ち込む、悲しくなるなどの「傷つき」なのか
イライラする、心地よくないなどの「不快感」なのか
をできる限り理解し、その気持ちに合わせて、対応をご提案しています。

これらの感情は、自分のコンディションによって、多少のバラつきはあるものの、ある程度は一定なものだからです。

仮に、コンディションが良い時に、許容できていたとしても、コンディションが悪い時は、毎回引っ掛かりが生じ、「傷つき」「不快感」が感じられている部分であることが多いのです。

「傷つき」であれば、相手に「制限」をかける対応を提案します。
「不快感」であれば、クライエントと相手、双方が快適に過ごせる方法を一緒に考えます。

自分の気持ちによって、関係性を良くするためにとる対応策が異なります。

従って、自分の気持ちは「我慢するもの」ではありません。それを手がかりに、「対応策を考えることに繋げるもの」なのです。

本日は、相手を「どこまで許容するか」の線引きを行う上で役立つ「制限」とは何か、カウンセリングの上ではどのように扱っているかを例に挙げ、ご説明しましょう。

カウンセリングにおける制限

「制限」とは、簡単には、「禁止事項」のことです。そして、「禁止事項を定め、相手に課すこと」を指します。そして、「制限」は、「努力をお願いするもの」ではありません。それが守られない場合は、「関係性を継続することが難しい」と相手に表明するものです。

「制限」を与える必要のある行為とは、自傷、暴力・暴言、人格や自分の心の核を否定されることなどの、心身が傷つけられたり、脅かされたりすることです。自身の安全感を保てなくなることは、「制限」の対象となります。

では、カウンセリングの中で、「制限」がどのように考えられているのか、ご説明したいと思います。

カウンセリングの目的は、主に「クライエントのありのままを受け入れ、個としての成長を促すこと」です。

「ありのまま」を受け入れるはずのカウンセリングの中で、どうして「禁止事項」を設けるのか?と質問されることがあります。確かに、「ありのままを受け入れること」と「禁止事項を相手に課すこと」は、相反するものとして捉えられるのも納得ができます。「禁止事項があるなら、ありのままを受け入れてない」と考えられているのです。

しかし、カウンセリングにおいては、「ありのまま」を受け入れるために、「禁止事項を相手に課すことが大切」だとされています。

カウンセリングとは、「人と人とが出会い、協働することを通して、成長していく場」です。そして、人と人とが出会い、関係性を育んでいく以上、如何なる関係性においても「制限」が必要です。なぜなら、お互いの安心感なしに、関係性を育むことは難しいからです。

従って、クライエントの「あるがまま」を第一に考えられているカウンセリングにですら、クライエントの権利が守られることと同様に、カウンセラーの権利が守られる配慮も必要だとされています。つまり、クライエント-カウンセラーの権利が守られる「制限が必要」とされているのです。

しかし、何でもかんでも「だめ!」と禁止されてしまうと、「ありのまま」が受け止められている気がしません。また、カウンセラーは、クライエントに安心感を提供することが資質として求められています。従って、カウンエラーがクライエントに表す、禁止事項は「最低限の」と定められています。

まとめ

さて、本日のコラムでは、自分の心の核を守りながら、相手を「どこまで許容するか」線引きする上で役立つ「制限」について、カウンセリングにおいてはどのように扱われているかをお伝えしました。

相手が「ダメなこと」をすることを防ぐために、「制限」を設けるのではありません。
お互いの心の核を守り、安心感を確保するため
「制限」が設けられているのです。

その結果、安心感を基盤とした関係性上に身を置き、自身の課題に向き合うことによって、成長していくことができるのです。

「ありのまま」を受け入れること、
それは、如何なる条件下においても可能なわけではありません。自分の安全感が確保された上でなされることです。

関係性にこじれが生じている時、「相手のありのままを受け入れましょう」と言われることも少なくありません。

しかし、大切なのは、相手の「ありのまま」を受け入れることではありません。

大切なのは、
・「ありのまま」を受け入れることを難しくしている自分の気持ちについて考ること
・その気持ちが癒される方法を探して行くこと
なのです。

自分の気持ちは「我慢するもの」ではありません。

それを手がかりに、「対応策を考えることに繋げるもの」なのです。

「傷つき」であれば、相手に「制限」をかける対応を、
「不快感」であれば、まずは自分が、そして相手が快適に過ごせる方法を考えれば良いのです。

それが、結果として、自分-相手の権利や心の核を大切にすることに繋がるのです。

そのためにも、自分の感情に気がつくこと、自己理解することはとても大切です。ひとりで考えるのは、大変な場合もあります。その際はカウンセラーをお役立てください。

次回は、「最低限の制限」の例として、子どもを対象としたカウンセリングであるプレイセラピーを例に挙げ、引き続き、「制限」について考えていきたいと思います。

皆さまにとって3月が、素敵な別れの体験と、新たな出会いの準備となる1ヶ月になりますように、心から願っています!

それでは、また4月にお会いしましょう!

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Writing by 水野

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