COLUMNコラム

【関係性と心の発達】大切な人を大切にするのはどうして難しいのか?-自己一致・不一致の観点から考える-

はじめまして。所属カウンセラーの水野と申します。

私のコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の相談対応の中で感じていることや、自身の体験を振り返りながら、一緒に考えさせていただけたらと思っています。

現在は、コロナ禍であることから、他者との関係性や距離感について悩まれている方が多いように感じています。STAY HOMEが続き、家族との距離は近くなり、反対に友人や職場の方などとは距離が遠くなったように感じている方もいらっしゃるかもしれません。

「身近な人との関係性のあり方」を考えることは、ご自身の生活をより良くする上で、とても大事なことです。

大切な人が自分を見て笑ってくれると温かい気持ちになります。その気持ちは、「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにつながる大事な感情です。
大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。

「大切にしたいのに、できない状況」は、誰にでも起こりうることです。

では、「大切にしたい人」を「大切にできない」状況はなぜ生じるのでしょうか?「大切にしたい人」との関係性を難しくする要因は何なのでしょうか?単純に考えると、仲良くしたいのであれば、仲良くできるはずです。それなのに、どうして「良好な関係を築きたい気持ちがある」だけではうまくいかないのでしょうか?

さて、第1回目のコラムでは「大切にしたい人を大切にするのはどうして難しいのか?」について考えていきたいと思います。
今回は、関係性を難しくする要因として、1.自分の中での不一致2.自分ー相手の間での不一致に焦点を当ててみます。

自分の中での不一致

人は「自分の気持ち、考え、行動(言葉)のバランス」を日々とりながら過ごしており、「これらが一致するのはまれ」です。

人間は成長に伴って、「自分の気持ちを調整する機能」を身につけていきます。「お菓子が欲しい!」とお店で泣きじゃくっているお子さまを見ることは、珍しいことではありません。一方、お菓子が欲しくて、泣き叫んでいる大人はほとんど目にしたことがないかと思います。それは、お菓子にそれだけの熱量を感じる大人が少ないという理由以上に、大人は「自分の気持ちを調整する機能」を身につけているからであると考えられます。

大人は欲しい物を「泣く」という行動ではない形で伝えることができます。また、欲しい物を「本当はたいして欲しいと思っていないんじゃないか?」などと考え、切り替えることができます。成長に伴い、自身の気持ちを表す方法を身につけているだけでなく、気持ちを抑えたり、修正したりする機能を身につけているのです。これは、社会に適応するための重要な機能です。

「自分の気持ちを調整する機能」は、社会適応を促す重要な機能ですが、気持ちと行動が一致しないことで複雑化することもあります。

「プレゼントを友人からもらった」Aさん、Bさんの反応を例に考えてみたいと思います。

Aさん
気持ち…「プレゼントをもらって嬉しい」と思う。
考え…「友人に嬉しい気持ちを伝えよう」と考える。
行動…友人に「ありがとう。」と言う。

Bさん
気持ち…「プレゼントをもらって嬉しい」と思う。
考え…「嬉しい気持ちを友人に知られるのは恥ずかしいことだ」と考える。
行動…友人に「これは好みではないのでいらない。」と言う。

Aさんの反応はシンプルです。気持ち、考え、行動が一致しています。
Bさんは、Aさんと同じ気持ちを感じたけれど、気持ちに対する行動が一致していないと解釈できます。行動は、気持ちを処理する際に使われる「考え」を経由しており、Bさんの場合は、「嬉しい気持ちになったが、嬉しさを友人に知られるのは恥ずかしい」との「考え」を経由したため不一致が生じたのです。噛み砕いて言うと、「あまのじゃくな反応」と捉えられるかもしれません。

Bさんのように、嬉しいと思っても、その嬉しい「気持ち」が「行動」で表現されるとは限らず、「考え」によって「行動」がねじれてしまう場合があります。

関係性が良好なとき、人は、嬉しさや感謝などのポジティブな感情を相手に対してシンプルに表現する傾向にあります。従って、「大切にしたい気持ち」を相手に伝える機会が増えます。一方、関係性がこじれているときは、「大切にしたい気持ち」の周りに、「モヤモヤしたたくさんの考え」が生じています。そうすると、「大切にしたい気持ち」は、この考えを経由し、「大切にしていないと感じさせる行動」として相手に表出する可能性があります。このことにより、自分の「大切にしたい気持ち」が相手に伝わらず、関係性がさらに、こじれてしまうのです。

自分−相手の間での不一致

自分の表出した行動には、それを受け取る相手が存在します。「どのように伝わるか」は相手に委ねられています。従って、自分が「大切さ」を表現した行動であっても、相手にはそのように伝わらない場合もあるということです。

引き続き、「プレゼントを友人からもらった」2人の例で考えてみましょう。

「Aさんの反応はシンプル」と先ほど記載しました。しかし、それは、あくまでAさんの中で一致しているという意味で「シンプルである」ということです。Aさんの気持ちや考えを友人は見ることはできないので、反応が一致しており、シンプルであったかどうかを友人がわかるわけではありません。従って、Aさんに「ありがとう。」と言われても、「本当は好みではなかったのではないか?」「無理してありがとうと言っているのではないか?」と友人は感じているかもしれません。

逆に、Bさんをよく理解している友人であれば、「これは好みではないのでいらない。」と言われても「また恥ずかしがっちゃって!あまのじゃくなんだから!」と思ってあげられるかもしれません。しかし、理解していても、関係性がこじれているときは、「恥ずかしがって言っているのを理解していても、あまのじゃくなところがいや。」と思うかもしれません。

自身の行動が、自分の意図したように伝わったのかは、相手に確認してみなければ、こちらとしても把握ができないのです。

関係性が良好なときは、相手に「自分の意図したように伝わったのか」、あるいは「自分が相手から何を伝えられたと感じているのか」などを確認し、すり合わせる作業ができます。しかし、関係性がこじれていると、コミュニケーションが困難になり、すり合わせが難しくなります。また、そのようなときは、相手の行動をポジティブに受け取るのが困難になっています。従って、自分としては、「大切さ」を表現していたとしても、相手には伝わっていないだけでなく、ネガティブに受け取られている可能性もあり、関係性がさらに、こじれてしまうのです。

お互いのために今からすぐにできること

① どこが一致しているのか、不一致なのかを分析してみる
関係性が良好なときから、「どこが一致していて、良好な関係性を築けているのか」を分析し、その理由を自覚しておくことが大事です。関係性は色々な刺激に影響を受けているとご説明しました。なので、関係性が良好なときに、うまくいっている理由を分析しておくことは、こじれたときにすぐに対応できる準備にもなります。

関係性がこじれている状態のときは、「関係性の課題はどの不一致にあるのか」を、まず分析してみてください。こじれている場合でも、不一致だけでなく、一致しているところも見つけられることもあります。そこを手がかりに解決に繋げていくことができます。

② 自分の気持ち、考え、行動をわけて整理して考えてみる
頭の中だけで考えるのではなく、思いつくところからそれぞれをわけて紙に書いてみることをお勧めします。「自分は行動の項目が多いな」など、関係性についてだけでなく、ご自身の傾向も掴めるので、自己分析にも繋がります。
しかし、それぞれが複雑に絡み合い、ひとりで整理することが難しい場合があります。その時は、カウンセラーにご相談ください。

まとめ

本日は、「大切にしたい人を大切にするのはどうして難しいのか?」について考えました。

「大切にしたい」という気持ちは、自分の中での不一致、自分−相手の間での不一致に加え、コロナなどの予期せず起こる外部からの刺激などによって知らず知らずのうちに影響を受けていることをご説明しました。そして、この「気持ち−考え−行動」のプロセスは、自分だけでなく、相手にも起こっているのだと考えると、さらに複雑化することもご想像いただけるかと思います。

関係性がこじれているとき、それはどちらかのせいではありません。
良好な関係性は、双方の歩み寄りにより築かれていくものです。お互いがお互いにとって「うまくいく方法」を考え、実践していくことで築かれていくものです。
ご自身だけで、頑張りすぎないことが大切です。

今回ご説明した現象は誰にでも起こりうることです。つまり、誰にとっても、大切な人と良好な関係性を築くことは難しいのです。

そう言うと、「いやいや。全然難しそうじゃない人もいるよ。」との声も聞こえてきそうです。その通りです。そう見える方は、実際にいらっしゃいますよね。でも、その方々も自覚をしていないだけで、「良好な関係性を築く何らかの方法」をとっています。「良い関係性はお互いの力で生み出すもの」、つまり、関係性がこじれていたとしても、自分たちの対応によっては改善のしようがあるということです。

次のコラムからは、「大切な人を大切にするために自分ができること」について書いていきたいと思います。次回は、今回ご説明した<自分の中での不一致>へのアプローチ方法として、「大切な人を大切にできるために:まずは自分の気持ちに目を向けてみる」をご紹介します。ぜひ、ご覧ください!


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Writing by 水野

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