COLUMNコラム

【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜テクニック編③〜

所属精神科医のT.Sです。

このコラムでは、

私が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器

つまりは「幸せになるコツ」

を紹介しています。

そして現在、私はこのようなシリーズを絶賛連載中でございます。

【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜導入編〜
【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜テクニック編①〜
【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜テクニック編②〜

前回のコラムでは、「面白い要素がはっきりしていて、それが相手に伝わる」というシンプルな原則を軸に、以下のテクニックを紹介しました。

①「面白さ」の種類を明確にする
自分が伝えたいのが「ツッコミ」「突飛さ」「博識さ」など、どの種類の面白さなのかをまず自覚すること。

②「伝わること」に全集中する
相手の表情や反応を常に観察し、伝わっていないと感じたら補足や言い換えを行う。

③オチからの「逆算」で構成する
ゴール(オチ)を先に決め、そこが一番際立つように伏線(フリ)や材料を散りばめて話を組み立てる。

④「ズレ」を意識的に作る
「本来そうあるべき」という常識からの逸脱(ズレ)が笑いを生む。(例:場違いな行動、言葉のチョイスのギャップなど)
ただし、常にボケ続けるのではなく、「平常時」があるからこそ「ズレ」が際立つことを意識すること。

⑤笑いにくいギャグ(悪口・自慢)は避ける
誰かを傷つける悪口や、本当か嘘かわかりにくい自慢は避ける。
自慢や嫌味になりそうな話をする際は、明らかに嘘とわかる大袈裟な表現やトーンを使い、「これはギャグです」と明確に伝えるのが効果的。

⑥非言語情報(声のトーン・表情)を活用する
抑揚や表情で話にメリハリをつける、あえて話の内容と表情をミスマッチさせて笑いを誘う、など。

これらのテクニックを振り返ったところでひとつ、私がまだ若かりし頃の「とある体験談」にお付き合いください。

【家庭教師】

 

私が大学生の頃、バイトで中学1年生の男の子の家庭教師をやることになりました。 これがかなり変わった子で、訪問初日にインターホンを鳴らしたところ、2階の窓が開いてその子が身を乗り出してきたんですけど、「ヒャッハァ──ッ!先生ようこそ───ッッ!」と叫びながら空に向かってエアガン打ってるんですよ。私、世紀末に来ちゃったのかなと思いました。

彼の部屋には勉強机が無かったので、ちゃぶ台のような机で授業していたのですが、野球のやり過ぎで異様にふくらはぎが発達してしまったみたいで、正座すると膝立ちみたいになってるんですよね。その姿もまた、なんだか可愛くて面白いんです。

さて、みなさんが学生の頃、“何回やっても覚えられない英単語” ってありませんでしたか?
私にはたくさんありました。ここでいくつか例を挙げようと思ったのですが、「何回やっても覚えられない英単語」なので、紹介することすら出来ないことに今気づきました。なにせ、覚えていませんから。

とはいえ、私の生徒に関しては記憶にしっかりと刻まれています。彼が絶対に覚えられなかった英単語…それは、「question:質問」だったのです。

クエスチョンなんて、よくテレビでも聞くじゃないですか。だからすぐ覚えられそうなものなのに、これが何故か覚えられない。ある日の授業で、question、質問、質問、question、質問…何度も書かせたり言わせたりしたんですが、数分後に聞いたらもう忘れてるんです。その日、彼の親が私に払った時給のほとんどは question に消えました。

そんなこんなで1時間半の授業を終えて、帰り際に玄関で靴を履いたあと、流石に覚えてるよな…と思いながらも、若干の不安を抱えつつ、最後に彼に確認しておくことにしました。

「じゃあ最後に聞くけど…英語で “質問” は?」

そしたらそいつ、晴れ晴れした笑顔で、なんて言ったと思いますか?

「質問?大丈夫ですッ!特にありません!」

だから私もニコッと笑って「そっか!じゃあまた!」と家を出たあと、泣きながら家に帰りました。

笑ってもらうための仕掛けを意識する

これは私の鉄板ネタで、困ったときにはこのエピソードを持ち出して何度もピンチを凌いできました。全く面白さを感じられなかったあなたは、今すぐイロモネアの審査員に応募してきてください。

さて、この話を私が実際にするときには、もちろん毎回この文章の通りに話すわけではありません。以下のような “笑ってもらうための心理的な仕掛け”を意識して話すようにしています。

まず、この話で笑いが生まれるのは “「question=質問」を必死に教えたのに、彼が「(先生への)質問は特にありません」と返してくる、「期待していた答えとのズレ」” があるからです。

このズレは大きければ大きいほど笑えるので、“いかに私が必死に教えたか” を、言い回しを変えたり必死の形相を見せたりして表現します。一方、彼の返答部分では “私の努力が以下に報われなかったか” を表現したいので、むしろあっさりとした、あるいは少し間抜けなトーンで話すことを意識しています。ただし、この部分がオチになるので、絶対に聞き漏らされないような聞き取りやすい発音、声量が必要になります。

あとはこのオチに向かって、もう少し話を肉付けしていきます。例えば今回は、いきなり本題に入らず「エアガンを撃つ変な子」「正座が膝立ちになるふくらはぎ」という描写を入れました。これにより、聞いた人は「あ、これはちょっと変わった面白い子の話なんだな」と、笑う準備(=心のハードルを下げること)ができるわけです。

なので正直、この部分にはどんなエピソードを入れたっていいのですが、私のこの話はすべて事実に即しており、本物の彼以上に面白い設定がなかなか浮かばないので、結局毎回そのまま話していることが多いです。

そしてオチの後の部分。当時の私は実際に、“すべてを諦め、ニコッと笑って帰った” のですが、ここで生徒に対して怒ったり指摘したりするよりもその方が面白いと感じているため、イジることなくそのまま書いてみました。しかし実際に対面で話す場合は、聞き手の反応を見ながら対応を変えています。例えば、生徒からの返答部分である程度のウケが取れたら、その後の私のリアクションについては触れずに “お手上げ” のジェスチャーをするだけで済ませたりします。逆にいまいちウケが悪かった場合には、別の生徒のもっと過激な面白エピソードを続けて話すこともあります。

自分の話の何処が面白いポイントなのか、それを自分で解説するのはなかなか胃が痛くなる作業でしたが、いかがだったでしょうか。

笑いに繋がる基本的なテクニックをいくつか抑えておけば、あとはその程度をイジったり、順序を変えたり、エピソードを入れ替えたり、身振り手振りを交えることで、大きな笑いへと導くことができるはずです。

…しかし!小手先の技術だけではどうにもならないのが「笑い」の奥深いところ。

実は、芸人さんのようなトークスキルよりも、もっと大切な「あること」が存在するのですが…

文字数の関係で、次の記事でご紹介することとしましょう!

最後に、話題の生成AI「Gemini」を使い、「コラムの冒頭で述べた①〜⑥のテクニックを駆使して、面白エピソードを一つ作ってみて」と命じてみたところ、なんとも形容しがたい生成物が吐き出されたので紹介しておきます。

 

【消失する静寂】

世界が一定の秩序を保っているというのは、おそらく我々の傲慢な思い込みに過ぎない。

その日、街角の小さな公園は、完璧な均衡の中にあった。冬の終わりの陽光が、埃を被ったベンチを等間隔に照らし、噴水の水音だけが時間の経過を証明していた。私はその静寂の断片を掬い取るように、ベンチの端に腰を下ろしていた。

均衡が崩れたのは、一人の男が隣に座った瞬間だった。

男は酷く使い古された黒い鞄を膝に置き、儀式を執り行う司祭のような手つきで、一台のトースターを取り出した。スチール製の筐体は鈍く光り、公園の柔らかな風景を歪んで反射している。男は無言のまま、電源プラグを自らの右の耳の穴へと、深く、迷いなく差し込んだ。

「同調完了」

男が低く呟くと同時に、私は微かな電気の唸りを聞いた気がした。彼は胸のポケットから、四角く断裁された食パンを取り出し、トースターの深淵へと滑り込ませる。レバーが下がる硬質な音が、平和な午後の空気を鋭く切り裂いた。

数分間、沈黙が支配した。通り過ぎる人々は、男の耳から伸びるコードと、その先にある家電製品を視界の端に捉えながら、まるで存在しない亡霊を避けるように歩度を速めていく。

やがて、短く、乾いた金属音が響いた。

焼き上がったトーストが、男の耳の拍動に合わせて跳ね上がる。彼はそれを恭しく受け取ると、あろうことか、自らの額に貼り付けた。

「……今日の出力は、少しばかり感傷的すぎるな」

男はトーストを額に吸着させたまま、一度だけ深く私を真っ向から見据えた。その瞳には、狂気ではなく、職人のような冷徹な納得だけが宿っていた。彼はそのまま立ち上がり、額にパンを掲げた奇妙な聖者の姿で、人混みの向こうへと溶けていった。

ベンチには、不自然なほどの静寂と、香ばしい小麦の匂いだけが取り残された。

私は、自分の耳の穴をそっと指でなぞってみた。そこには、ただ湿った暗闇があるだけだった。日常という名の薄氷が、足元で音を立てて割れていくのを感じながら、私はただ、冷え切った空気の中に立ち尽くしていた。

…Gemini、お前、大丈夫なのか…

それではまた次回。

※今回のシリーズはこちら↓

【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜導入編〜
【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜テクニック編①〜
【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜テクニック編②〜
【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜テクニック編③〜

※過去のコラムはこちら↓からご覧いただけます。

【メンタルヘルス】精神科医T.Sコラム
Writing by T.S


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