所属精神科医のT.Sです。
このコラムでは、
私が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器
つまりは「幸せになるコツ」
を紹介しています。

2025年だけは終わらないと信じていたのに、裏切られました。終わる気でいますね、こいつ。
11月某日、もはや日本人の義務教育と言ってもいい映画「時をかける少女」がテレビで再放送されていました。
流し見にも関わらず結局いつもの場面(真琴が最後のタイムリープで千昭との思い出が流れ込んでくるシーン)で泣いたわけですが、自分の過去を振り返ってみると、私も戻りたい場面がいくつもあります。なんであの時嘘ついたんだろう、もっと気の利いたことを言っておけばよかった、無駄に時間を浪費しなければ良かった…考えればキリがありません。
人生のターニングポイントは、いつも後ろを振り返って気づくもの。分かれ道に差し掛かったまさにその瞬間、それが自分の人生のターニングポイントであると自覚できる人がいったいどれだけいるでしょうか。そして、一本道でしか無いと思っていた人生だけれど、振り返れば実は他の選択肢もあった。その可能性、過去の自分が持てたはずの希望を直視できる人もまた、それほど多くはないでしょう。
しかし、” Time waits for no one.” なのですね。時は待ってくれません。
映画の中で千昭は「未来で待ってる」と言い残し、真琴は「うん、すぐ行く…走って行く」と答えました。真琴が思い描く未来には千昭がいますが、千昭だけではなく、未来の真琴自身もまた待っているのです。
時の流れは不可逆で、じっとしていても流れていく。足踏みしてても靴底は減る。人生は毎秒毎秒が分かれ道の連続で、だからこそ常に自分に言い聞かせないといけないのです。それならいっそ、自分の足で、向かいたい未来に走っていこう、と。
人生2度目のギックリ腰になった私は、フィジカル的な意味で真琴のように跳べる自信もないわけですが、そうでなくとも過去に戻るタイムリープなんか出来ません。であれば、今を変えないと。未来の自分にとって、今こそやり直したい過去かもしれませんから。
細田守監督の最新作公開に合わせて、ということで再放送された「時をかける少女」でしたが、人々が1年間を振り返り始めるこの時期に放送されたことに、何か勝手な大義を見出してしまった私なのでした。
それでは、また次回のコラムで。もっかい映画見直そ…
…と、なんとなく良いことを言っているこの雰囲気で煙に巻きたいところなのですが、そうそう、前回まで私はこんなコラムを連載してしまっているのですね。
【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜テクニック編①〜
前回のコラムで私が伝えたかったのは、以下の2つです。
◯「面白い人」には、“テクニック” と “マインド” という2つの柱がある。
◯最も重要なテクニックは「相手に伝わるように話す」ことである。
「面白い人」は、「今自分が何を伝えたいのか」をまずハッキリさせ、「どうすればそれが相手に伝わるか」という順番で話を組み立てています。とはいえ毎回計算しているわけではなく、まるで呼吸するかのように自然と、雰囲気を作り、話を組み立てているのです。
この点について、今回の記事ではもう少し詳しく見ていきましょう。
まずは自分が伝えたい “面白さ” をハッキリさせる

面白い話をしたいとき。あるいは面白い振る舞いをしようとするとき。人は何を伝えたいのでしょうか。
当然、“面白さ” です。当たり前ですが、面白いと思ってもらうためには、面白さが伝わらないといけません。
しかし、その “面白さ” にもいくつもの種類があります。絶妙なニュアンスで捻り出された渾身のツッコミ、芸人が突然自ら海に飛び込むような “突飛さ”、あるいは “博識な人” に直面したときに感じる「勉強になるな」という感覚。これらはすべて、種類は違えど “面白さ” であることは間違いありません。
まず大切なことは、自分が伝えたい “面白さ” が一体どのような類のものなのか、自分の中でしっかり認識することです。そうすることで初めて次のステップ、つまりは「どうすればそれが相手に伝わるか」に進むことができるのです。
たとえば、「勉強になる面白い話」を聞かせたいとき、話しながら海に飛び込んでいく人なんていませんよね。…いや、想像したらそれはそれでちょっと面白い気もしてきましたが、それは笑いのプロが絶妙な塩梅で、ここぞというタイミングで遂行した場合のみ笑いに変わるのであって、素人が手を出してはいけません。料理初心者が、冷やし中華とビーフシチューを混ぜるようなものです。多くの場合はそれよりも、“最も伝えたい面白さ” を軸に、笑いを組み立てるべきです。そしてそのうえで、「どうすればそれが相手に伝わるか」を考えていきます。
極論すれば、「面白い人」になるために必要なのはこの2ステップだけです。つまり、「面白い要素がはっきりしていて、それが相手に伝わる」だけでいいのです。
しかしこの2ステップ目、「どうすれば相手に伝わるか」こそが最大の難所になります。一概に「こうすればいい」と説明することは不可能で、無限の選択肢があり、状況を見ながらその都度、瞬時に判断しなければいけないのです。
「伝わること」に全集中する

そもそも、自分が伝えたいことが相手に伝わったかどうか、人はどのように判断するでしょうか。
そこには、何かしらのリアクションが必要なはずです。なにか言われたときに無反応で黙っていると、「返事は?」と言われますよね。
頷く、お礼を言う、質問する、笑う、逃げていく…何かしらの反応があってこそ、私たちは「伝わったな」ということを実感することが出来ます。
なので今回の場合、見聞きした人が「面白い!」というリアクションを取っているかどうか、話者は常に意識する必要があります。かといって学校の授業のように「今までのところで面白さが分からない人はいますか?」と逐一聞くわけにもいきません。本当に面白くて笑っているのか、理解してないけどとりあえず笑っとけ、の笑みなのか。相手の表情や姿勢、声のトーン、反応スピードなど、様々な情報を駆使して「伝わっているのか」を確認しながら進む必要があるのです。しかもその確認をしながら、これから話す内容を同時に考えなければいけません。やらなければいけないことは実に膨大です。
そしてもしも伝わっていないとしたら、必要に応じて内容を補足したり、表現を言い換えたりする必要があります。あるいはその前段階として、そもそも”伝わりやすいような下準備” も有用です。
以前にテレビで、お笑い芸人のくりぃむしちゅー上田さんがある御宅を訪問した際、ボロボロの床の上を歩きながら「ずっと立っていられない感じですね〜…常に震度2みたいな感じ」というボケで笑いを取っていました。
このボケはつまり、「この床、地震でも起きてるの?ってくらい揺れますね」という内容なんですけど、それだとあまりにストレートで面白くない。なので敢えて「地震」という言葉を使わず、しかし地震を示していることがハッキリと伝わるよう「震度2」という言葉を使っているのです。加えて、それよりも前に「ずっと立っていられない」という一文をサラッと入れてあることで、その後の地震の比喩に繋がりやすくなっているのです。
このように、実は「面白い話」は逆算によって作られます。自分が伝えたい面白さのゴール、つまりは “落ち” がまず存在し、 そこに到達するまでに、”落ち” が際立ち且つはっきりと伝わるような材料を散りばめて、少しずつ組み立てていくのです。なんだかデアゴスティーニみたいですが、これこそが本質なのです。
あとは、その大きな落ちまでの中継ポイントとして、小〜中くらいの笑いを適宜入れていきます。どれだけ面白い落ちだとしても、それが1時間後までやってこないのであれば、聞いている側はそれまでに興味を失ってしまいますからね。話しながら何かボケが浮かんだら、前述の上田さんのように、伝わりやすくするために軽く導線を引いたうえで、ボケる。それを終えたら次のボケまでまた繋いでいく。この繰り返しが、「面白い話」を作っていくのです。
面白い「ズレ」をどう作るか

ここで、”面白さ” を生み出す秘訣をお伝えします。
それは、“ズレ” を意識することです。多くの笑いは、このズレから生まれます。誰もが頭に浮かぶ代表的なツッコミといえば「なんでやねん」ですが、これは「本来はそうじゃないだろ!」と、そこに生じたズレに対してツッコんでいるわけです。
本来はそうすべきタイミングじゃないのに、海に飛び込む。敢えて滅多に使わないような古い言葉や英単語をチョイスする。本来動くべきタイミングで、動かない。このズレをこそ、人は面白いと感じるのです。前述の上田さんのボケでいうと、本来であれば「家の床」と「地震」は直接結びつかない単語ですよね。ここにズレがあります。ちなみに、知識がある人のことを面白いと思うのも、そこに自分の知識とのズレ、ギャップを感じるからです。
あとはそのズレをどう作るかがポイントですが、そこをあまり意識しすぎると無理にボケを連発することになりかねません。芸人が100回連続で海に落ちたとしても、100回とも同じように笑えませんよね。漫画のONE PIECEは確かに面白いですが、すべてのコマに「どん!」「どん!!」「ドン!!!」とか書いてあったら、なんだか太鼓の達人みたいでくどいじゃないですか。そういうことです。
「面白い人」というのは、実は毎秒面白いわけではありません。あくまで “平常時” があってこその “ズレ” なので、平常時の話をどのように展開していくかが重要なのです。
だからこそ、ズレをしっかりと際立たせるためにも、落ちを予想できたり、あるいは分かりにくくなってしまうような言葉や言い回しは極力避けましょう。これについては次回のコラムで実例を挙げて説明しようと思っています。
なお、その緩急をつけるのに、話すトーンの抑揚や表情が役立ってくれるのは言うまでもありません。話し手が感情豊かであれば聞く側も没入しやすいし、場合によっては話の内容と表情のミスマッチというズレで笑いを取ることも出来ますね。
笑いにくいギャグは避けるべし

さて、そのズレ(ギャグ)についてもいくつかの注意点がありますが、集約すると「笑いにくいギャグは避けるべし」、この一言に尽きます。
わかりやすい例だと、誰かをこき下ろすような悪口、不謹慎でモラル的にアウトに近いようなギャグです。一部の閉じたコミュニティの中では笑いに繋がるケースもありますが、一般的に推奨できるものではありません。
また、自慢話も取り扱い注意です。自慢が多すぎると辟易しますが、謙遜ばかりされても面白くない。嫌味にならず笑いを取る、というギリギリのラインが求められます。
しかし話の上手い人って、このあたりのバランスを取ることにヒジョ〜〜に長けているんですよね。誰かを責めたり自慢のような内容になるときには、明らかに嘘と分かる返答をしたり、表情だけはとぼけていたり、声のトーンが明らかに普段と違っていたりする。要するにこれってつまり、「これはギャグです」と明らかに分かるように伝えているんですね。逆を言うと、本当かウソか分かりにくいようなギャグは笑いにくいのです。(むしろそれが狙いという場合は例外)
例を挙げると、「あなたって相当お金持ちですよね?」と聞かれたとき、ギャグのつもりで「そうですね、年収1千万ですから」と返すと、聞いた側には(いや…でも1千万ならあり得る…のか…?)と、笑う前に余計な引っ掛かりができてしまう。それよりも、「そうなんです、次はどこの国を買おうか迷ってて」とでも返したほうが、明らかに嘘だと分かって笑いやすいし、厭味にもなりません。
明らかにギャグだと分かるギャグを放つ。これは基本中の基本ですが、その一方で “身内にしか伝わらない「分かる人には分かる」ギャグ” というのも、うまくハマれば抜群の切れ味を発揮する可能性を秘めています。X(Twitter)などでも時折、「元ネタを知っているからこそ面白いツイート」ってありますよね。
先日私が友人たちと電車に乗っていたとき、車内でポテチを食べ、その指を丹念に舐めている50代くらいの男性を見かけました。その後なんの躊躇いもなくつり革や手すりを掴んでいるのを見てげんなりしていたところ、私の友人が静かに「特級呪物やん⋯」と言ったのを聞いて、漫画「呪術廻戦」を知っている者だけが腹を抱えて笑ったのでした。
この類の笑いは、元々のギャグの面白さに加え、「自分のセンスが肯定された」という喜びに似た感覚、仲間意識などによって面白さがブーストされ、より深く刺さりやすいのです。そのため、聞き手の反応を見ながら適切な頻度で挟み込むことによって、場をさらに盛り上げることもできるでしょう。

いかがだったでしょうか。
「面白い人」になるための全てのテクニックを網羅することはできませんが、それでも私が思う重要なエッセンスはお伝えすることが出来たかと思います。
やることは膨大ですが、基本の考え方はシンプル。繰り返しになりますが、「面白い要素がはっきりしていて、それが相手に伝わる」だけでいいのです。悩んだときには、是非この基本に立ち返ってください。
次にお会いするのは、もう2026年。来年もみなさんが面白おかしく過ごせるよう、精一杯コラムを更新していく予定ですので、今後とも末永くよろしくお願いいたします!次こそは、いよいよこのシリーズも完結できる⋯はず?
それではまた次回。みなさん、良いお年を!
※今回のシリーズはこちら↓
【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜導入編〜
【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜テクニック編①〜
【精神科医が解説】「面白い人」になるための条件 〜テクニック編②〜
※過去のコラムはこちら↓からご覧いただけます。
【メンタルヘルス】精神科医T.Sコラム
Writing by T.S
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