こんにちは!所属精神科医のT.Sです。
このコラムでは、
私が精神科医として患者さんと接する中で手に入れ、磨き上げてきた様々な武器
つまりは「幸せになるコツ」
を紹介しています。
前回の記事の冒頭でもお伝えしたのですが、7月に第一子の女の子を授かった私は、現在育休真っ最中でございます!
児童精神に非常に造詣が深く、私も尊敬してやまない心理士さんがいらっしゃるのですが、私が育休に入るにあたり、その先生からこのように送り出されたのでした。
「子どもは間違いなく可愛いです。そこは揺るぎませんとも。
ただね、もしかして先生、育休を2ヶ月も取って、可愛い赤ちゃんと幸せな毎日を過ごしていたら、仕事に戻りたくなくなっちゃうんじゃないかって…そんな心配してませんか?
そう思いますよね。僕も育休前はそう思ってました。
でもね先生、僕の場合は…育児よりも仕事の方が断然楽でした。正直、1ヶ月で仕事に戻れて助かったとさえ思いましたよ。ハッハッハ!
そういうわけで先生、頑張ってください!」
そんなこんなで、激戦地に送り込まれるかの如く不安を抱えながらスタートし、現時点で約1ヶ月弱が経過した私の育休。
果たして、精神科医の精神は今どうなっているのか?
子どものメンタルケアの重要性が叫ばれる昨今、父親になった自分に出来ることとは?
今回のコラムでは、そんな私が育休中、初めての子育てを経て感じたこと、学んだことをつらつらと書いてみようと思います。
精神科医のコラムとして載せるに値するものなのか怪しいところですが…ええいままよ、行ってみましょう!
子育ては偉業だ
児童精神科に携わるものとして、日々子どもやそのご家族と触れ合うことは多いですが、自分が子どもを授かってみて、改めて思いました。
世のパパさんママさん、本当に毎日お疲れ様です…!
いや、そんなテンションでは伝えきれない…
ほんどぉに、おづがれさまでずぅ!!(息切れしながら)
「子育て、大変ですよね」と、今まではどこか判を押したように伝えてしまっていたかもしれません。
しかし、今は違います。
頻回の授乳やミルク…寝室の壁が揺れるほど響き渡る泣き声…深夜に始まる謎の覚醒とダンス…やっとの思いで寝かしつけベッドに寝かせた直後、振り返ると暗闇で静かにこちらを見つめる2つの目…
子どもを連れている世のパパさんママさんを見るたび、今自分が体験している子育ての洗礼が、鮮烈に脳裏をよぎります。
あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!
おれは深夜に泣き叫ぶ赤ん坊のオムツを替えたと思ったら、いつの間にかまたおしっこをしていた…
な…何を言ってるのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…
そんな過酷な体験を毎日乗り越えながら、一つの命を責任持って育て上げているんですね。
そして今、一人の大人として日々頑張っている皆さんにも、もちろんこんな私にも、お腹が空いては泣き叫び、オムツを替えてと泣き叫び、眠たいんだと泣き叫び、大きな腕の中で安心して眠っていた赤ちゃん時代があったわけです。
自分に子どもが生まれてから、どういうわけかそんなことばかりに思いを馳せるようになり、道行く人々の手を取り「頑張ったね…頑張ってるね…」と声をかけたい衝動に駆られるようになりました。完全な変質者ですね。笑
それは半分冗談としても、私の中で少しだけ世界の見え方が変わったのは間違いありません。
ママは偉大だ
そして間違いなく、母親は偉大です。
妻が娘と接している様子を見ていると、言葉では形容しがたいのですが…でも確実に、自分と違うなと感じるのです。「柔らかい雰囲気」とでも言うのでしょうか、まさに母性が溢れている感じがするのです。
妻と同じように寝かしつけ、ミルクを飲ませたはずなのに、早朝まで寝ては起きてギャン泣きを繰り返し、もはや娘が泣いているのか私が泣いているのか分からない夜がありました。
深夜3時頃までは育児日記用の自撮りをする元気もあったのですが、私自身も活動時間が24時間に近づくにつれ、身も心も限界を迎えつつあり、なんなら太陽もお迎えして朝が来てしまいました。
大変な疲労と無力感を抱え、申し訳なさいっぱいで妻を起こしたところ、起き出してきた妻がおっぱいをあげて抱っこをしたら、なんと文字通り10秒で寝たのでした。イッタイ、ナニガオコッタノ…?
ただ、私が思う妻の凄いところは、子どもを安心させ即座に寝かしつける能力なんかではありません。
妻が本当に凄いのは、自分の疲れやイライラを決して子どもには向けず、どれだけ子どもが泣き叫ぼうと「愛おしい、可愛い」と思いながら接してくれることです。
妻のこのような人間性は本当に尊敬しますし、「この人と家庭を築けて本当に良かった」と思う理由でもあります。
パパも偉大…でありたい
ただ一方で、妻が「自分の子どものことで、疲れたなんて思ってはいけない」と自分に言い聞かせてしまわないか、という心配もありました。
だって、疲れないわけがないのです。
日に日に重くなっていく子どもを長時間抱っこし、夜中も数時間ごとに起きて授乳し、着せた直後に吐き戻しで汚れてしまったベビー服を着替えさせ、大量のガーゼハンカチを洗濯し、それ以外に自分たちの家事もこなし…
これだけのことをこなしておきながら「可愛いから全然苦じゃないよ!」と言い切れる人など、この世界にいても本当に一握りなのではないでしょうか。いや、そもそも実在するのか…?と疑ってしまいます。
私自身、産後うつになってしまったお母さんたちをたくさん診察してきましたが、疲労困憊で太陽が昇るまで寝かしつけをしたあの夜、「これが毎日続いたら、産後うつになる人がいても全然おかしくないな…」と心の底から実感したのでした。(もちろん、産後うつはそれだけが原因ではありませんが)
「自分の可愛い子どものことだから、全く疲れない」は、確かに理想ではあります。
なれることなら、私だってそうなりたいです。
でも、「自分の子どものことで、疲れたなんて思ってはいけない」を目指し、自分の身体と心に鞭打って走り続けるのは、あまりに酷だと私は思います。
むしろ、自分の疲れ、精神状態は素直に認め受け止めたうえで、無理だと思ったら周りに頼ることも必要でしょう。
私の体感では、自分だけで抱え込まず、必要なときには周りに助けを求めることができる人ほど、うつになりにくい傾向があります。
なので私は、時折妻から「疲れたー!!」という言葉を聞けると、少し安心したりもするのです。
妻が「ダンナは頼りにならない」と絶望し抱え込んでしまう…
そんな状況を阻止することが、父親としての自分の重要な務めの一つだと考えています。
妻が安心して子どもを任せられるよう、私自身もまた、父親としてしっかり育児に取り組み、改めて気を引き締めて妻と二人三脚で歩んでいこうと思います!
(ちなみに私が料理担当だった先日、オシャレな大根料理が完成するはずが、どういうわけか怪しげなダークマターを生み出してしまいました。偉大なパパへの道のりは、まだまだ険しそうです)
なにより、子どもは偉大だ
これまで、初めての育児がいかに大変かを書き連ねてきましたが、最後に声を大にして伝えたいことがあります。
我が子は最高に可愛いです!生まれてきてくれてありがとう!
本当は、私の写真フォルダの大半を占拠している愛娘の写真をこれでもかと貼り付けて、「目は奥さんに似て天使」「目以外は自分に似ていると言われて複雑だけど、とにかく天使」「まつげが長くて天使」「産毛が可愛くて天使」などと、個人ブログでやれよと言われても文句の言えないコラムを書きたいくらいなのです。
どれだけ夜泣きで起こされても、吐き戻したミルクやおしっこで家具が汚れても、作ったミルクを一生懸命飲んでくれたり、「あー」「うー」の一言や、気持ちよさそうな寝顔、時折見せてくれるようになった笑顔、というかもう動いたり息をしているのを見るだけで、
は、はわぁ…
と温かい感情が湧き上がって、疲れやネガティブ感情が帳消しになるのです。
「仕事のほうが楽だよ」と言われて始まった育休でしたが、
申し訳ありません!全然仕事に戻りたくないです!!
この記事を書いている9月中旬、つまり生後2ヶ月の段階で、既に体重は生まれたときの約1.8倍に。
自分の体重が1.8倍になったら卒倒モノですが、子どもの成長だとしみじみと嬉しさがこみ上げます。
抱っこするにも徐々に腕がキツくなってきて、自分が Mr.インクレディブルみたいな身体になってしまわないか心配ですが…安心してください。今のところ、我が子に負けないぷにぷにボディは健在です。
子どもが生まれたことで、私自身、人生の新たな局面に入ったと実感しています。
今回のコラム、ただ単に私の思いの丈を綴った、身も蓋もないものになってしまった気がしなくもないですが、児童精神科に携わるものとして、我が子との触れ合いや経験から学べることは非常に多いと確信しておりますし、それらを皆さんと共有することにも、なにかしらの意義があるのではないか(そうであれ!)と感じています。
今後、不定期に我が子の話が登場するかもしれませんが、暖かい目で見守りつつ、参考にできそうなところは是非活かしてみてください!
それでは次回のコラムも、ぜひ楽しみにしていてくださいね!
※過去のコラムはこちら↓からご覧いただけます。
【メンタルヘルス】精神科医T.Sコラム
Writing by T.S
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