所属カウンセラーの水野です。
12月に入りましたね。
2021年は、みなさまにとってどのような1年だったでしょうか?
年末は、仕事がバタバタすることに加え、忘年会・クリスマス・年越しなどのイベントも多く、お忙しくされる方も多くいらっしゃるかと思います。
コロナ禍による人との心地よい距離感の維持の難しさに、イベントの多さも加わり、ご自身の時間を確保し、落ち着ける空間を持つことが難しい時期と言えるかもしれません。
12月後半の数日は、お好きな食べ物や、飲み物を飲みながらでも、「自分にとってどんな1年だったか」その出来事とともに、「どのように感じていたか」ご自身のお気持ちについても考える、ゆったりとした時間を少しとっていただけたらいいなと思います。
さて、私のコラムでは、「大切な人との関係性をどのように築いていくか」について、日々の相談対応の中で感じていることや、自身の体験を振り返りながら、一緒に考えさせていただけたらと思っています。
前回のコラムでは、「大切な人を大切にできるために:まずは自分の気持ちに目を向けてみること」について書かせていただきました。
・ご自身の気持ちに目を向け、ご自身の状態を把握すること
・日常の生活をまわすために、「おいておいている自分の気持ち」をご自身の意識の中に戻し、認めてあげること
これらを通して、結果的に大切な人を大切にできることに繋がるとお伝えしました。
前回のコラムはこちらです⬇︎
【関係性と心の発達】大切な人を大切にできるために:自分の気持ちに目を向けてみる-「おいておいた気持ち」を意識の中に戻すこと-
今までのコラムはこちらです⬇︎
【関係性の相互性からみる心の発達】水野コラム
今回のコラムでは、前回ご説明した「気持ちに目を向ける」の次のステップである、
「自分の気持ちに目を向けて、考えてみる」
について書かせていただきたいと思います。本日は、「自分の気持ちについて考えることの大切さ」と「もともとあった気持ち」に焦点を当ててご紹介したいと思います。
大切な人を大切にすること、大切にできることは、「自分自身を大切にすること」にも繋がる大事な作業です。
「自分はここにいて良いのだ」「もっと頑張ろう!」など、安心感や、モチベーションにもつながる大事なことです。
コミュニケーションがスキルであるのと同様に、「大切な人を大切にできること」もスキルです。練習して習得できるスキルなのです。
皆さまのお役に少しでも立てていただけるように、私も工夫しながら書かせていただきたいと思っています。
自分の気持ちに目を向けて、考えること
「考える」機能は、気持ちと行動の調整役です。
「自分の気持ちに目を向け、考えること」とは、
① どうして自分がその気持ちを感じたのか?
② 自分の気持ちをどのように対処するのか?
を考えることです。
「自分の気持ちに目を向けて、考えること」で、
・どのようにその気持ちと自分自身が向き合うのか
・その気持ちを相手に伝えるのか
・伝える場合はどのような形を取るのか
などの対処方法を選択することができるようになります。
そのためには、まず、「どうしてその気持ちを感じたのか」を考える必要があります。
自分自身での向き合い方、相手に伝える場合はその内容の検討など、その気持ちに沿った、対応方法を考える必要性があります。
なぜなら、以前もご説明したように、「気持ち」と「行動」の不一致は、関係性のこじれに繋がる場合が多いためです。ご自身の「気持ち」について「考え」、知ること、そして、その気持ちや考えに沿った行動をとることで、この不一致は防げるようになります。
「もともとあった気持ち」が変換されること
自分の気持ちについて考えを深めていくと、「あれ?もともとはこういう気持ちだったんだっけ?」と自分で自覚していたものとは異なる気持ち(もともとあった気持ち)を発見することがあります。
それは、ひとつの刺激に対して、湧く気持ちはひとつではないからです。
気持ちは、何層にも重なりながら、広がっています。
「もともとあった気持ち」は、相互的な関係性を経ることや、色々な刺激によって、別の気持ちに変換される可能性があるのです。
例えば、「おもちゃを買って欲しい」と泣き続けているお子さんがいます。
このようなケースのお子さんの状態を分析すると、
最初は「おもちゃ買って!買って!」と「買ってもらえなかったこと」が不快で泣いています。
次第に「こんなに泣いても自分の要求が通らないこと」が不快で泣くようになっています。
最終的には、泣き疲れ、「何で泣いているかわからず泣いている状態」になっています。
これは、時間の経過、自分のエネルギーを割いたこと、周囲の様子などの刺激を受け、もともとあった「おもちゃが欲しい」という気持ちが、「買ってもらえなかったことが不快」という気持ちへと変換され、最終的には、混乱している状態となっていると捉えることができます。
このような状態へ対処するには、
・それぞれの気持ちの変換点に立ち戻り整理すること
・「もともとあった気持ち」への対処をすること
が大切です。
上記のケースの場合は、
1.「そんなに泣いて疲れちゃったでしょう」と今の状態をフィードバックし、「落ち着いてお話ししよう」とクールダウンを促すこと
2.「自分の要求が通らなくて残念であった気持ち」に共感を示すこと
3.「買ってもらえなくて残念であった気持ち」に共感を示すこと
4.そして、「そんなに欲しかったんだね」ともともとあった気持ちに共感を示すこと
が必要です。
このように、「もともとあった気持ち」に寄り添った対処が繰り返されていくことで、お子さんは、不快な気持ちの背景には、「もともと欲しい気持ちがあったこと」に自分で気がつけるようになります。そして、「その思いを相手に伝える際にはどうしたら良いか」を考えられるように、成長していきます。
「もともとあった気持ち」への対処ではなく、二次的、三次的な感情への対処がなされても、「もともとあった気持ち」が扱われているわけではないので、現実的な解決には繋がりません。
自分が自覚している気持ちのより深層にある「もともとあった気持ちは何だったのか?」そして、「その気持ちがどのように変換されていったのか?」について考えることは、その気持ちをどのように扱っていくかを考える上でとても大切です。
前回、「自分の気持ちをおいておいて」いる状態が慢性化すると、「おいておいた気持ち」に加え、「自分の我慢が報われない状態」による怒りや傷つき、虚しさという二次的な気持ちが重なり、余計にしんどくなってしまうことをご説明しました。
そして、その二次的な気持ちに関しては、意識の中に戻し、認めることで、二次的な気持ちによって、ご自身が傷つくことのないように対処することを提案致しました。そのことにより、本来あった「おいておいている気持ち」を扱えるようになるからです。
今回も同様の原理です。
自分の気持ちに目を向けて気がついた気持ちの、より深層にある「もともとあった気持ちは何だったのか?」について考えることで、二次的な気持ちでなく、「もともとあった気持ち」を見つけ、その気持ちを扱うことができるようになるのです。
「もともとあった気持ち」と「行動」の不一致
秋篠宮家のご長女である眞子さんがご結婚され、渡米し、新しい生活を始められたとニュースで拝見致しました。
眞子さんのご結婚にあたっては、何年も前から様々な報道がなされていました。
報道の事実関係も、真意もわかりません。わからない立場で言うべきではないのかもしれませんが、眞子さんの「複雑性PTSD」の背景に、そのような報道の形がひとつの要因であったとされていることから、どうして報道がそのような形、攻撃とも捉えらるような形になったのか?その理由について一心理士として、考えさせられました。
その理由は様々であると思いますが、大きな理由のひとつとして、眞子さんのことを「心配する」という気持ちがもともとはあったのではないかと推察します。
小さい頃から成長を見守って来た国民にとって、ご結婚は大きなことです。「良い相手を見つけ、幸せになって欲しい」と望まれていた方も多くいらっしゃったかと思います。
「相手の幸せを願うばかりに、心配しすぎてしまうこと」は、どの方にも、どのご家庭でも起こり得ること、そして日々起こっていることです。私自身のことを振り返っても、思い当たることがいくつもあります。
「子どもの将来のためを思って勉強するように言っているのに言うことを聞かない」
「学校で忘れ物をしたら恥ずかしいだろうから準備をするように毎日言うがしない」
など、どのご家庭でも日々起こっているのではないでしょうか。
相手を心配するあまりにとった自分の行動に対し、相手から「反発」が返ってくると、人は怒りや悲しみを感じます。その怒りや悲しみにより、相手に攻撃性を向けてしまうことがあります。
「反発」とは、相手が「自分の望む形、良いと思っている形を受け入れないということ」です。そして、同時に、ご自身の「心配しているという気持ちが相手に受け取られなかったということ」でもあります。
報道の背景に「心配という気持ち」がもともとあったと仮定した場合、その「心配」とは裏腹にご結婚のご準備を進められていくということは、「その心配を受け取らなかったこと」のように映ったと考えられます。相手に受け取られなかった「心配」は攻撃性を帯びて表現される傾向にあることが起因し、報道も過熱化していったのではないでしょうか。そして、「もともとあった心配という気持ち」が変換されたまま、立ち戻ることがなかったのかもしれません。
「もともとあった心配しているという気持ち」が、「怒り」に変換され、「攻撃」という行動で相手に示されていては、心配という気持ちが相手に伝わりません。また、相手には「怒られている」「攻撃されている」と捉えられ、関係性がこじれてしまいます。
このような「もともとあった気持ち」と「行動」の不一致によって、攻撃されたと感じた相手は、「反発」を強めます。その「反発」に更に反応し、関係性の悪循環が生じてしまうのです。
「もともとあった気持ち」と「行動」の不一致への対処
本来「心配する気持ち」は相手に寄り添うものです。相手を大切に思うからこそ、湧く感情のひとつです。それが、相手に受け取られないと、「自分の望む形、良いと思っている形を受け入れないということ」への怒りだけではなく、「理解してもらえないこと」に対する怒りや傷つきに繋がります。
「心配なあまりに繰り返し言い、相手から反発され、相手を怒ってしまうこと」で生じる関係性の悪循環は、いかなる関係性においても起き得る現象です。特に、子育ての相談、思春期のお子さまについての相談をお聞きする時によくお見受けします。
そして、「子どもが言うことを聞かない!」とお子さまに対して、攻撃的になっていらっしゃるように見えて、どのケースも、その背後には親御さんご自身の傷つきがあるように感じられます。
悪循環の渦中にいらっしゃり、ご自身が傷ついたままの状態では、「もともとあった気持ち」を見つけることは難しいかと思います。なぜなら、そのような状態では、自覚されている怒りの先にある「もともとあった気持ち」について考えを深めていくためのエネルギーが残っていないからです。
従って、まずは、エネルギーを補給すること、つまり、傷つきを癒やすことが先決です。
このような傷つきは、「共感されること」を通して癒されていきます。
親御さんや、先生、支援者などの大人たちには、子どもたちを適切な方向に促す役割があります。何でもかんでも、子どもたちの思うようにはさせてあげられないのです。適切ではない場合は、軌道修正することも時には必要です。
どこまでを子どもたちの主体性を尊重し、どこからを大人の責任で導いていくのか、そのバランスをとっていくことはなかなか難しいことです。何がお子さんにとって適切な対応なのかわからず、自分たちの対応は正しいのか不安を抱えながらも、日々対応されていることも多いのではないでしょうか。
ひとりで抱えこまず、ぜひどなたかにご相談されながら、進めていただきたいと思います。そうすることで、エネルギーが補給され、結果的に、悪循環を止めることができます。
そして、「もともとあった気持ち」を見つけ、その気持ちを扱うことができるようになり、不一致を解決する糸口が掴めるのです。
まとめ
今回のコラムでは、「自分の気持ちに目を向けて、考えること」特に、「もともとあった気持ち」についてご説明しました。
①「考える」機能は、気持ちと行動の調整役であること
②「自分の気持ちに目を向け、考えること」とは、「どうして自分がその気持ちを感じたのか?」「自分の気持ちをどのように対処するか?」を考えることであること
③「もともとあった気持ちは何だったのか?」そして、「その気持ちがどのように変換されていったのか?」について考えることは、その気持ちに沿った対処方法を考える上で必要であること
④自分が自覚している気持ちのより深層にある「もともとあった気持ち」は、相互的な関係性を経ることや、色々な刺激によって、別の気持ちに変換される可能性があること
⑤「もともとあった気持ち」が、変換されたまま相手に表出されると、相手に自分の気持ちが適切に伝わらず、関係性の悪循環が生じてしまうこと
⑥関係性の悪循環が生じた場合はひとりで抱えず、相談することでエネルギー補給すること
についてご説明しました。
今回は、お子さんとのやり取りを例に挙げ、ご説明させていただきました。
お子さまの幸せを願っていても、それに即した行動とることは時に難しいかと思います。
大切だからこそ、自分の気持ちを相手に押しつけてしまうこともあります。
「本当にその子の幸せを願っているのなら、そのようなことはしないはず」というご意見もありますが、そう単純でもないのではないかと感じています。
「相手を思い心配しすぎてしまうこと」そして、「自分の望む形を相手に押しつけてしまうこと」は必ずしも「自分のエゴだ」とは言い切れず、その「心配」に相手が助けられているケースも多くあるのではないかと思うのです。
「もともとあった気持ち」を一緒に感じること、お子さんへの心配に関するご相談にも、カウンセリングをお役立て下さい。カウンセリングの守られた空間で、カウンセラーと一緒に定期的に「ご自身の気持ちについて考える時間」を確保することにより、エネルギーが補給され、結果的に良い循環を導き出せるようになる場合がございます。
次回は、引き続き「もともとあった気持ち」について、掘り下げて書かせていただきたいと思っています。ぜひ、ご覧ください!
今年も大変お世話になりました。
寒さが増して参りましたので、くれぐれもお身体には気をつけられて、良いお年をお迎えくださいませ。
また来年も、コラムを通して、皆さまと一緒に考えさせていただけること、とても楽しみにしています!
どうぞよろしくお願い致します。
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