COLUMNコラム

【心理コラム】「またその遊び?」「またその絵本?」~子どもの繰り返しあそびと単純接触効果~

こんにちは。
公認心理師・保育士の岡﨑太一です。

早いもので、2025年も残り2週間を切ってしまいました。1年の経過があっという間で、毎年この時期になると、驚きと少しの寂しさが入り混じったような気持ちになります。
それでも、この気持ちはそれだけ充実した時間を過ごせた証なのかもしれません。
皆さまもどうぞ、この1年を振り返りながら、ご自身の頑張りを労い、穏やかな気持ちで新しい年を迎えられますようにお過ごしください。

こちらのコラムも、9月から投稿を始め、今回で4本目となりました。
回を重ねるごとに、少しずつ読んでくださる方との距離が縮まっていくような感覚があり、とても嬉しく思っています。

ところでみなさんは、「単純接触効果」という言葉は聞いたことありますか?
心理学では、繰り返し触れるものに対して好意や安心感を持ちやすくなるという現象指します。

今回はこの単純接触効果を、子どもの発達の視点から紐解きながら、“なぜ子どもは同じ遊びや行動を何度も繰り返すのか”その奥にある意味や発達のプロセスを一緒に考えていきたいと思います。

「またその遊び?」「またその絵本?」
子どもと関わっていると、そんな瞬間によく出会います。

大人からすると、無邪気な子どもの要望に付き合いながらも「よく飽きないな・・・」と思うこと、ありますよね。大人にとって退屈にも思える“繰り返し”ですが、実は心理学的にとても大切な意味をもっています。

「また同じ!」をイライラの種ではなく、子どもの成長を感じられるきっかけに変えていただけたら嬉しいです。


単純接触効果とは?

心理学の世界で「単純接触効果(mere exposure effect)」と呼ばれる現象があります。これは、人は繰り返し接触する対象に対して好意や親近感を抱きやすくなるという心理効果です。結構日常生活の中に潜んでいる心理効果なので、身の回りのことで探してみると面白いかもしれません。

たとえば・・・

・街中で同じ広告を何度も見るうちに、その商品が気になってくる

・同じクラスや同じ社内にいる、特に話したことのない人でも、毎日顔を合わせていると自然と親近感が湧く

・最初は興味のなかった音楽でも、何度も耳にすると好きになっていく

などなど・・心当たりがあるのは私だけではないはずです。
大阪万博で大人気になった「ミャクミャク」も、発表当初は好き嫌いが分かれていた気がしますが、万博が終わるころにはすっかり受け入れられていたのも、「単純接触効果」が発揮された例だと私は思っています。私もすっかり愛着を感じるほどになっていましたから。(笑)

親子関係における単純接触効果

単純接触効果は、親子関係においても大切な役割を果たしています。

親と子どもは日々の生活を通して、同じ言葉、同じ遊び、同じ行動を何度も繰り返しています。子どもにとってはその繰り返しこそが 「安心の積み重ね」 なのです。

1.毎日の声かけが育む安心感
「おはよう」「いってらっしゃい」「おかえり」「おやすみ」
この一見ありふれた「あいさつ」も、毎日繰り返されることで子どもにとって「変わらない安心感」となります。親の存在そのものが「単純接触効果」によって “安心の対象” として強化されていくのです。

2.絵本や遊びのリクエスト
「もう一回読んで!」「またこの遊びをしよう!」
こうした子どものリクエストに、つい大人は「また同じ?」と疲れてしまうことがありませんか?私は正直に言います。あります。めっちゃあります。

しかし、同じ絵本や同じ遊びを繰り返すことは、単純接触効果によって「親と一緒にやることが好き」「安心する」という感覚を強める大切な行為です。

3.繰り返しが“絆”をつくる
大人同士の関係でも、同じ時間を繰り返し共有することで親密さが深まりますよね。子どもにとって親は生活の中心。日常の繰り返しは、安心を育む土台です。


単純接触効果を活かす注意点

単純接触効果は「万能」ではありません。
繰り返し触れることで好きになることもあれば、「またこれか…」と飽きや不快感につながる場合もあります。

重要なのは、

・子どもが「安心できる相手」「楽しいと感じられる状況」であること

・無理やり押し付けるのではなく、自分から「もう一回!」と求められる体験であること

親子のやりとりで繰り返しが喜びになるか、ただの退屈になるかは、子どもの主体性と安心感を大切にできているかどうかによって大きく変わります。


繰り返し行動の発達的意味

次は少し視点を変えて、子ども自身が「繰り返し」をすることの発達的な意味を見てみましょう。子どもは「繰り返し」の中から、どんなことを吸収しているのでしょうか。

1.繰り返しは「学びの実験」
子どもが同じ遊びを繰り返すことは、時に学びの実験です。
同じ行為を繰り返す中で、子どもは「予測」と「結果」を確かめ、安心感と達成感を積み重ねているのです。

2.「予測できる世界」を育む
人は予測できるものごとに安心します。子どもは繰り返しを通じて、「やればこうなる」という因果関係を学び、世界の仕組みを理解していきます。

初歩的なものだと「いないいないばあ」も予測と結果が一致して安心できるかかわり遊びです。

大人「いないいない・・」

赤ちゃん「(ばあが来る・・)」ワクワクドキドキ

大人「ばあ!」

赤ちゃん「(やっぱり!楽しい!)」

という感じで、思った通りの驚きが来ることで楽しんでいますよね。他にも、「ブロックを積むと崩れる」「ボールを投げると転がる」
こうした繰り返し体験が、子どもの世界観の土台を作ります。

3.安心と挑戦のバランス
繰り返し遊びは「安心できること」を繰り返すからこそ、少しずつ新しい挑戦に踏み出せる準備になります。
「前と同じようにできた!」という体験は、自己効力感を育て、やがて「次はもっと!」へと広がっていくのです。日々同じ遊びのように見える中でも、子どもは意外と変化があったりするものです。それが心の中だけの変化で、時に目に見えないものであることもあるのが難しいところですが。(笑)

繰り返しと親の気持ち

親からすると「もう飽きた」「時間がない」と感じることも当然あります。
そこで大切なのは、「毎回100%応える必要はない」ということです。

・時には「また今度ね」と伝えながら、全体として「繰り返し」に付き合うこと

・「また同じ!」を「成長のサイン」と見直す視点を持つこと

親が無理して応えるのではなく、“あ、この繰り返しにも成長の意味があるんだ”と思えるようになると、同じ遊びのループにも、少し余裕を持って付き合えるようになります。


おわりに

「また同じことばかり…」と感じる瞬間は、子育ての日常にあふれています。
でも少し視点を変えれば、それは安心と絆を育むチャンスであり、子どもが世界を理解し成長している証でもあります。

単純接触効果が示すように、繰り返し触れることで人は安心し、好きになり、信頼を深めます。そして子どもにとって繰り返し行動は、学びと挑戦の第一歩。

今日も「また同じ!」に出会ったら、ぜひ一呼吸おいて子どもが成長しているサインなんだなと思って無理せず見守り、付き合っていきましょう。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。来年も、皆さんの日常が少し楽になるヒントを、コラムを通じてお伝えしていけるように精進していきます。

良いお年をお迎えください!では!


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